溺愛は突然に…
「…はい、乗って」
「…あの、ちょっと?!」

訳もわからず、戸惑う楓を強引に車の後部座席に押し込むと、その横に、陽翔がサッと乗り込むと、運転手は直ぐ様車を発車させたため、楓は逃げ場を失った。

「…あの、社長、どちらにいかれるんですか?」

恐る恐る問いかける楓に、陽翔は笑顔で答えた。

「…楓ちゃんは、秘書の資格を持ってるだろ?これからは、時々こうやって交渉の場に連れていこうと思って」

「…私、仕事の事は何もわかりませんし、ただのバイトですよ?そんな大事な仕事に同行するなんて」

…確かに、バイトなんかを交渉の場に連れていくなんて、言語道断だ。交渉相手に何を言われるかわかったもんじゃない。

だから、楓は不安で仕方ない。

「…大丈夫、デザインは、女の子の意見も必要だし、俺が話しかけない限り、横にいてくれるだけでいい。交渉相手に話しかけられて困ったら、フォローするし、今日はとりあえず、旨い料理を美味しそうに食べてくれたらいいよ。それとも、食べるのは嫌い?」

「…いいえ、食べるのは大好きです」

楓の答えに満足そうに微笑んだ陽翔は、楓の頭を優しく撫でた。

あまりに優しい陽翔に、楓は気恥ずかしそうに微笑むと、陽翔はその笑顔にドキッとした。

「…今日の交渉相手のことが書かれてるから、目だけ通しておいてくれる?きっと、何かの役に立つから」

陽翔はそれを悟られないように書類を楓に渡すと、窓の外に視線を移した。
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