××したいくらい、好き。

だけど、だけど。


「ありがとう、ございます…」


初めて、なっちゃん以外の人に、普通の笑顔を向けることができた瞬間だった。


「……っ」

「…え???」


すっと、両手を広げるかいとくん。

そして床に手をつき、まるでクラウチングスタートのフォームをとった。


「今抱きしめるからそこにいて」

「どんな勢いで抱きしめるっつんだこのバカツキ バカイト!!」


太一君が、どこからか用意した巨大なハリセンで、勢いよくかいとくんの頭を叩く。

どっと笑いが巻き起こった。


「…、あはは……っ」


つられて、私も笑った。

初めて、人と話すことが楽しいって思えた。

そんな私を見て、なっちゃんも嬉しそうに笑ってくれてて。

それすらも嬉しく思えて。


あれだけ最悪な始まりでも、今は楽しいって思えるなんて。


なんだか不思議だね。


< 34 / 173 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop