好きですか? いいえ・・・。





チャイムが鳴って、授業が終わった。私は、教科書を閉じて、それから1枚の真っ白なルーズリーフを取り出し、シャーペンを握った。



「そういうわけで、『太陽は動かない』の作詞でもしようかな。」



すると、落合くんは私のシャーペンを取り上げた。



「ちょっと何するの!?」



落合くんは何も言わずに、私のカバンに筆記用具やルーズリーフ、教科書を詰め込んで、車椅子を押した。



「先生、元気になったんで、教室戻りまーす!」



「え!? ちょ、私も!?」



私の動揺を他所に、山辺先生は笑いながら、「はーい、お大事に。」と言った。



「ちょっと落合くん! 私、教室には……。」



階段の下で、私を手すりに掴ませ、それから落合くんは「えっさ、ほいさ。」と車椅子を担いで踊り場に運んで、私を見下ろす形になった。



「ほら、自分の足で歩くんだ。教室まで。」



「でも……。私には無理だよ……。」



「だったら、戻っていい。でも、本当に『戻りたい』なら、自分の足で決めるんだ。戻るか、『戻る』か。」




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