好きですか? いいえ・・・。
「あ、十志子! 彼氏様が迎えに来たよ?」
「彼氏……様!?」
私はたじろいだ。
「だってそうでしょ? 噂になってるよ? 十志子と落合くん、付き合ってるって話。」
「付き合ってる!?」より一層たじろいだ。
「ないない。ただの友達だから!」
「ただの友達が普通、車椅子押して教室に入ってくる? ましてや男子だし。」
私はチラッと自分の席で弁当箱を開ける川上くんの方を見た。
「本当にただの友達だから!」
そのただの友達、落合くんは教室に入って来て、私の前で止まった。
「なあ、財満さん。昼飯、一緒に食べない?」
すると、周りがニヤニヤとし出して、「じゃ、カツカレーはまた今度ってことで!」とそそくさと逃げるようにして教室を出て行った。
「……あれ? オレ、空気読めてなかった?」
「全然。」私はぶっきらぼうにそう言った。
「私、今日も学食だから、パンか何か買って来てくれる?」
「ああ、いいよ。ちょっくらひとっ走りしてくるわ。」
落合くんは教室を走って出て行った。私はまた川上くんの方を見た。川上くんと目が合って、また私は顔を逸らした。