はやく気づけ、バカ。



(...?どういうこと?)

そう思っていると長野さんが「でもさ、」とまた話を切り出した。

「桐谷のことオッケーしない理由って、なんかあるの?ほかに。」

「あ~...。いや、それは...、」

(...どう答えようか、)

と思案していた時、丁度タイミングよく駅が目に入った。

「あっ駅見えましたよ長野さん!」

それをいいことに今までの会話をすべてぶった切ってそういうと、
すこ~し不可解そうに顔をゆがめながら長野さんは「そうだね。」と頷いた。

「あともう少しですね!」

「...あぁうんそうだねえ。」

さっきまでの話は終わり。という意図をくみ取ったのか少しの呆れ顔の代わりに、長野さんはそれ以上何も言わなかった。


そして駅の改札に到着すると、

「あ、俺こっちだから。じゃあね甘利ちゃん!また明日、こんな時間までありがとうね。」
と告げ長野さんは逆方面の改札へと歩いていった。


「あ、はいまた明日!」

長野さんのその声につられて言うと、改札に定期ケースから取り出したICカードを当て、それがピッと音が鳴るのを同時にホームへと足を踏み入れた。


(長野さん、やっぱりいい人だなぁ。今日の食事も初めは奢るって言ってくれてたし。断ったけど。)
もともと一回ごはん奢るって言っていたのに”俺が誘ったから”って今日の分とは別で奢ろうとするなんてーー気前のいいひとだ。


彼女さんへのネックレス探してるんだから今、私にお金を使うべきではないでしょう。とは思ったけれど。





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