【仮面の騎士王】
ロッソは一呼吸おくと、強圧的に、だが小さな声でつぶやいた。


「今更、婚約破棄などできるわけがない。いいか、もしもお前が次に余計な事を言い出したら、あの役立たずの首をはねてやるからな」


「あの役立たずって、誰のことです?」


 ケイトリンは、ロッソの口から出た首をはねるという言葉にぞっとした。本当に、これがあの優しい父なのだろうか。


「ギースに決まっているだろう。この私の長男に産まれておきながら、シャンタルが死んだことをいまだに引きずって口もきけんとは! お前を王家に嫁がせることで、なんとか面目を保てると思っていたのに、お前までもが逆らいおって」


「ひどい! お兄様はお母様を亡くされて苦しんだのです。私だって、いまだに雷が苦手です。お母様の亡くなった日に雷が落ちましたもの。そのせいで屋敷は火事に」


 ケイトリンは両手で口を押えると、涙目で訴えた。しかし、それはロッソの怒りという火に油を注いだだけだった。


「黙れ! いいか、お前はファビアン王子と結婚するのだ。もしも逃げたり、王子に嫌われるようなことがあれば、ギースだけではない。マノンも、お前に関わった侍女どもも、皆罰を与えるからな!」


「どうして、そんなこと」


「当然だ。どこの馬の骨ともしれぬ男とお前を引き合わせるなど、職務怠慢だ!」


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