【仮面の騎士王】
ギースが屋敷から姿を消して5日が経過した。
その間、貴族はもちろん、ペンプルドン家の誰もがギースの不在について耳にすることはなかった。もとから存在していないものがなくなったところで、誰も気に留めることはないからだろう。ただひとり、ロッソだけはギースが逃げたことに焦りをみせたが、それも一瞬のことだった。今頃どこかでのたれ死んでいるだろうと高をくくっていた。むしろその方が手間が省けるとさえ考えていた。
ラシェルの街は日が落ちるとすっかり暗闇に包まれ、賑わいも影をひそめる。徘徊するのは、街を警備する者か、猫やネズミたち。あるいは闇を愛する盗賊だけだ。各家庭では、ランタンを用いて部屋の中はそれなりに明るかったが、ペンプルドン家の屋敷の中は、まるで別世界のように光り輝いていた。いたるところに何本ものランタンが置かれていたし、使用されている蝋燭の数も、王宮なみで余所とは比べ物にならなかった。
そんな中、屋敷の2階中央にある大きな円形のテーブルを挟んで、レイフはファビアンと向かい合っていた。ファビアンの隣には、ロッソが両手を組んで座っている。テーブルの中央には、8つの真珠と12のダイヤの入った王太子妃を表す紋章冠が、ふさふさの赤い枕の上に恭しく置かれていた。代々の王太子妃が結婚するさいに被ったもので、ファビアンが王を説得して用意したものだった。
「いよいよだね!」
はずんだ声で、ファビアンがレイフに話しかける。
「本当に、仮面の盗賊が今夜我が家を襲撃に来るのでしょうか?」
ロッソは、今一つ納得できない顔でワインに口をつけた。酔わなければ、自分の家をおとりに使う作戦など、到底認めらそうもない。
その間、貴族はもちろん、ペンプルドン家の誰もがギースの不在について耳にすることはなかった。もとから存在していないものがなくなったところで、誰も気に留めることはないからだろう。ただひとり、ロッソだけはギースが逃げたことに焦りをみせたが、それも一瞬のことだった。今頃どこかでのたれ死んでいるだろうと高をくくっていた。むしろその方が手間が省けるとさえ考えていた。
ラシェルの街は日が落ちるとすっかり暗闇に包まれ、賑わいも影をひそめる。徘徊するのは、街を警備する者か、猫やネズミたち。あるいは闇を愛する盗賊だけだ。各家庭では、ランタンを用いて部屋の中はそれなりに明るかったが、ペンプルドン家の屋敷の中は、まるで別世界のように光り輝いていた。いたるところに何本ものランタンが置かれていたし、使用されている蝋燭の数も、王宮なみで余所とは比べ物にならなかった。
そんな中、屋敷の2階中央にある大きな円形のテーブルを挟んで、レイフはファビアンと向かい合っていた。ファビアンの隣には、ロッソが両手を組んで座っている。テーブルの中央には、8つの真珠と12のダイヤの入った王太子妃を表す紋章冠が、ふさふさの赤い枕の上に恭しく置かれていた。代々の王太子妃が結婚するさいに被ったもので、ファビアンが王を説得して用意したものだった。
「いよいよだね!」
はずんだ声で、ファビアンがレイフに話しかける。
「本当に、仮面の盗賊が今夜我が家を襲撃に来るのでしょうか?」
ロッソは、今一つ納得できない顔でワインに口をつけた。酔わなければ、自分の家をおとりに使う作戦など、到底認めらそうもない。