【仮面の騎士王】
「私のせいで、ごめんなさい」


「ケイトがあやまることじゃないよ」


 もう幾度となく繰り返された会話。それでも、ケイトリンは謝らずにはいられなかった。


「ねぇ。ケイト? もう、お互い謝るのはやめないかい? もしも君が謝るなら、僕も本当は口がきけたことを謝らなければいけない。不毛な会話だ」


 ギースは、大きく伸びをすると、空を見上げた。


「それよりも、僕が関心があるのは、これからのことさ」


「これからのこと」


 ケイトリンはつられて空を見上げる。秋の高く澄み渡った空だ。


「僕が家から連れ出しちゃったからね。本当は、ファビアン王子の妃になりたかった?」


「いいえ!」


 間髪入れず、否定すると、ギースが目を丸くする。


「なるほど。そんなにレイフ王子が好きなんだ」


 口に出さずとも一瞬で紅潮したケイトリンの頬が、是と返事をしたも同然だった。


 ふたりが幸せになれるといいな、とギースは思った。そして、その直後に思い直した。


(違う。僕が、必ずふたりを幸せにしてみせる)


 心地よい風が通りぬけて、ギースの頬を撫でていく。空のまぶしさに目を細めたところで、ギースは誰かに背中を押された。


「やーい! こっちだよ!」


「待て!」


 子どもたちは、ギースとケイトリンの体を盾にして逃げ回り、レイフにつかまらないようにし始めた。レイフは子どもの素早さに苦戦中だ。


 レイフを手玉にとって得意げな子どもたちの表情を見て、ケイトリンはふっと笑みを漏らした。


「そうですね。私もこれからのことを考えます。みんなで幸せになれるように」


 明るい日差しを受けながら、ギースは、力強く首肯した。




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