【仮面の騎士王】
アルフォンスはレイフの心の内を見透かしたように、彼に向き直る。その体は、数メートルもある巨人だ。アルフォンスは、現実の数倍の高さから、レイフを見下ろす。
『偉大なるランベール王のご決断だ。異論はないな? レイフ王子』
『しかし、父上は私を次の王にと・・』
まるで少女のようなか細い自分自身の声が、レイフをいらだたせた。
『ほう。証人は誰かな?』
王が次代の王を指名するためには、牧師か相応の位にある貴族の証人が必要だ。ランベールがそれを望んでいたことをレイフはわかっていた。しかし、正式に指名を受けるとすぐに父が死んでしまうのではないかという思いがあり、ためらっては先延ばしにしていた。
王という重責を自分が担うことに対する不安が原因の一つであることも、後になって気付いたが、すでに遅かった。
『いえ、証人はおりません』
『なるほど。私はペンプルドン侯爵とジゼル王妃が証人だ。残念ながら、王は死を前に冷静ではいられず、誤ってレイフ王子を指名したのだろうな。もしくは、王の座がほしいあなたが、王の言葉を都合よく解釈したのか』
レイフは、下唇を噛み締めた。苦い鉄の味がする。反論したい気持ちはやまやまだが、証人がいないのは事実だったし、ランベールの死を前にして争うことは、彼の死が穢れるような気がした。
結局、ランベールの死を悼んでいる間に、アルフォンスが次の王となることがあっさりと決まった。
『偉大なるランベール王のご決断だ。異論はないな? レイフ王子』
『しかし、父上は私を次の王にと・・』
まるで少女のようなか細い自分自身の声が、レイフをいらだたせた。
『ほう。証人は誰かな?』
王が次代の王を指名するためには、牧師か相応の位にある貴族の証人が必要だ。ランベールがそれを望んでいたことをレイフはわかっていた。しかし、正式に指名を受けるとすぐに父が死んでしまうのではないかという思いがあり、ためらっては先延ばしにしていた。
王という重責を自分が担うことに対する不安が原因の一つであることも、後になって気付いたが、すでに遅かった。
『いえ、証人はおりません』
『なるほど。私はペンプルドン侯爵とジゼル王妃が証人だ。残念ながら、王は死を前に冷静ではいられず、誤ってレイフ王子を指名したのだろうな。もしくは、王の座がほしいあなたが、王の言葉を都合よく解釈したのか』
レイフは、下唇を噛み締めた。苦い鉄の味がする。反論したい気持ちはやまやまだが、証人がいないのは事実だったし、ランベールの死を前にして争うことは、彼の死が穢れるような気がした。
結局、ランベールの死を悼んでいる間に、アルフォンスが次の王となることがあっさりと決まった。