【仮面の騎士王】
 フェルナンドは、体をずらし、部屋への通り道を作ると仕方ないといった様子で微笑んだ。


 ケイトリンは俯いたまま部屋に入り、そっと中を見回す。どうやら中にいたのはギースとフェルナンドのふたりだけらしい。レイフは城へ戻ったのだから、いるわけはないとわかってはいたのだが、ほっとすると同時に少しのさびしさを感じた。


 フェルナンドはドアノブを掴んだまま体を半分廊下に出して左右に視線を走らせると、音がしないように慎重に扉を閉めた。


「もうお休みになったとばかり思っていましたよ。深窓のご令嬢だと思っていましたが、意外に行動派なのですね。いや、ここに慈善活動に来るくらいだから、意外には余計でしたね」


 フェルナンドの声音は優しかったが、ケイトリンは顔を上げられずにいた。


「ずっと廊下にいたの?」


 ギースはケイトリンに椅子をひきながら探るように尋ねる。


「ええと、婚礼がどうのというあたりから。あの、それって私とファビアン様のことですか?」


 フェルナンドとギースは目を合わせた。フェルナンドが鋭い目つきをよこしたのに比べ、ギースは瞼をひっぱられたように大きな目玉をしている。


「いや、違うんだ。ケイトとは関係ないよ」


「では、どなたのご婚礼ですか?」


「えっと、それは・・」


 ギースの瞳が泳いでいるのは、誰の目にも明らかだ。


「私の、ですね」


「いや・・」


 言葉に詰まるギースにフェルナンドは助け船を出そうとしない。その代り、机の上に杯を置いた。


「長い話になります。まず、座って、これをお飲みなさい。温まりますよ」


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