【仮面の騎士王】
 こんなにも大勢の人前で踊るのは初めてで、ケイトリンの足は小刻みに震えていたが、ファビアンはそんなことにお構いなしでステップを刻む。


 なんとか最初の1曲を終えたケイトリンは、ファビアンに軽くお辞儀をしながら、衆目の中、大きな失敗もなく踊ることができたことに安堵した。あとは、周囲の人々に挨拶をしながら適当な頃を見計らい、場を辞せばよいだろう。


 そんなことを思いながら顔を上げると、こちらに向かって歩いてくる長身の男性が目に入った。


 ダブルブレストの黒い上着を羽織り、姿勢良く一歩一歩を力強く踏み出す姿は精悍で、自然と人目を引く。その証拠に男性が進む方角は、自然と人垣がわかれ、彼が歩くための道ができていく。誰もが、その男性の歩みに目を奪われていた。


 そしてどうやら、彼は一直線に自分たちの方へ近づいているようだった。


 金色の肩章をつけ胸にブローチが並んでいるところを見ると、どうやら、将官の礼装のようだった。軍人だろうか、と考えて、ケイトリンはその男性の左肩に赤いフラジェールがあるのを見て、その男性が誰なのかを理解した。


 それは、このミルド国の大元になったといわれるフォンテーヌ領の領主にのみ装着を許されたもので、フォンテーヌ公爵を表す印だった。


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