【仮面の騎士王】
「そうだな。ではその君の幸運を、ほんの少し分けてもらおう」


「どういう意味だい?」


「簡単なことだ。ケイトリン嬢と踊るだけさ」


レイフは片膝を折ってケイトリンの手を取ると、その甲に唇を寄せる。そのまま瞳だけを動かして、ケイトリンを見つめた。


「踊っていただけるかな。ケイトリン」


オペラグローブの上から触れられただけなのに、ケイトリンは素肌に触れられたような気がして、一瞬息ができなくなる。


かがんだ状態で見上げられ、丁寧に誘われているにもかかわらず、レイフの視線は否を許さないようにするどく光っている。


「あ、あの私。踊りはあまり得意、きゃ!」


不得手を理由に断りを入れようとしたケイトリンは、突然腕をひかれレイフの胸元に倒れ込んだ。


「では、後でな。ファビアン」


「おい、まだ僕だって1曲しか踊ってないんだぞ」


「宮廷舞踏会では、連続で同じ人間と踊るのはマナー違反だろう?」


ファビアンは唇を尖らせたが、ケイトリンを引き留めることはしなかった。


ケイトリンは大広間の中央に連れ出され、再び大勢の注目を浴びる。レイフに恥をかかせるわけにもいかず、ケイトリンは俯いたままレイフと踊り始めた。


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