【仮面の騎士王】
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「あなた。レイフ王子は、ずいぶんと健康そうではありませんか」
大広間全体が見渡せる王族専用のバルコニーで、豪華な椅子に深く腰かけ、王妃ジゼルは自慢の長い足を組みなおした。赤いローブが持ち上がると、さまざまな宝石がちりばめられた踵の高い靴がちらりとのぞく。
すでに40にさしかかろうという年齢であったが、肌艶の衰えを知らず、30歳で通るほどに若々しい。隣に座るアルフォンスが実際の年齢よりずいぶん老けて見えるのと対照的だ。
「やはり、病気がちというのはたんなる口実のようだな。だが、ファビアンのもとへロッソの娘が嫁いでくるのだし、今更どうということもないだろう」
アルフォンスは酒杯を片手に、肘掛けに体を預けている。言葉とは裏腹に、アルフォンスの眉間には大きなしわが刻まれている。
「これまでずっと、病気を理由に自分の屋敷に引きこもっていたのに、いったいどうして急に姿を見せたのかしら。それも、ケイトリンと踊って目立とうとするなんて」
ジゼルは、息子のファビアンを溺愛していたが、その息子よりも甥のレイフの方が眉目秀麗で、しかも有能であることを理解していた。だからこそ余計に、人々の注目がレイフに集まることを許せなかった。
「もしかして、次の王位を狙っているのかも」
ジゼルは独り言のようにぽつりとつぶやいたが、それは、計算された上での発言だった。
こう言えば、アルフォンスがどう感じるか、ジゼルには手に取るようにわかっていた。