【仮面の騎士王】
一方のフォンテーヌはといえば、かつてはラシェルと同じようにフォンテーヌ公爵といえば王のことであった。しかし、第一都市をラシェルと定めた頃から、その決まりは曖昧になっていった。


 最近は、フォンテーヌ公爵が王位を継ぐとラシェル公爵となり、後継ぎにフォンテーヌ公爵位を譲るということが定番となっていた。そして、レイフの父であるランベールは、自分が王になった際に、フォンテーヌ公爵をレイフに譲っていたため、現在は、ラシェル公爵がアルフォンスでフォンテーヌ公爵はレイフとなっている。


「フォンテーヌ公爵の名前を継ぐ者が王太子と決まっているわけではありませんが、下々の者は、皆、次の王がその名を継ぐものと思っているとか」


 ジゼルの言は、真実ではなかったが、真実を含むものだった。そんなきまりはなかったが、民衆の中には、フォンテーヌ公爵が王太子であると誤解している者も少なからずいたからだ。貴族の一部にも、ランベールの後にアルフォンスが王位についた際、レイフがフォンテーヌ公爵であることを理由に反対するものがいたほどだった。


「ばかばかしい!」


 アルフォンスは、酒杯に残った酒を一気に飲み干す。


「そうですわね。ミルド国では、王の遺言により次の王が指名される決まり。なにも、フォンテーヌ公爵が次の王という決まりではありませんし」


 アルフォンスに同意しながら、ジゼルは自分の膝の上に頬杖をつき、わざとらしく溜息をついた。


「でも、少し残念ですわ。レイフ王子がいなくならない限り、フォンテーヌ公爵の名も領地も、あなたのものにはならないということですものね」


 アルフォンスは、美しい自分の妻の横顔を見て目を細めた。


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