【仮面の騎士王】


***


(あら、こちらではなかったかしら)


ケイトリンは、広い廊下を歩きながら、今歩いてきたばかりの方向を振り返った。繰り返される挨拶と踊りに疲れ、休憩室に下がったものの、そこにも大勢の女性がいて、お祝いを述べつつファビアンとのことを根掘り葉掘り尋ねられた。


辟易して休憩室を後にし、幼いころの記憶を頼りに、庭園に出ようと思ったのだが、かなり歩いてきたはずなのにどうも思った通りにたどり着けない。わずかに聞こえる音楽を頼りに歩けば、大広間には戻れそうだった。


しかし、ケイトリンは迷った挙句、大広間とは逆の方角に歩いた。一人になって気持ちを落ち着ける場所がほしかった。


しばらく歩くと、小さな扉が表れた。扉の横にある窓から別の建物の明かりが見える。外気が吸えるかしら、と思い、ケイトリンは思い切って扉を押してみた。鍵はかかっておらず、人気はない。建物の外ではあったが、天井があり石畳が続いている。


 気付いた時には、ケイトリンは自然に足を踏み出していた。薄明りが足元を照らしている。ときどき吹き抜ける風が、心地よい。


(こんなことで、私、立派にやっていけるのかしら)


 王太子妃になるのは少女なら当たり前にみる夢だったし、ファビアンとは幼いころに遊んだ記憶があったため、あまり不安はなかった。母は、元王女であったため、王宮にも親しみがあった。しかし、いざ宮廷舞踏会に出てみると、急に重圧を感じて押しつぶされそうな気分になった。


 考えても仕方のないことだとはわかっている。少しずつ努力して、皆に認めてもらえるような王太子妃にならなくてはいけないのだ。しかし、噂に聞いていた宮廷舞踏会が想像以上の
華やかさで、戸惑いを隠しきれなかった。


(あら? ここはどこかしら)




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