【仮面の騎士王】
 しばらく歩くと、急に周囲が開けてきた。左手に良く手入れされた小さな庭が広がっている。ところどころに明かりがともされているようで、その明かりが幻想的にあたりの植物に陰影をつけていた。


 石畳はちょうどそこで左右に分かれており、その大きさから右側がメインの廊下であることがわかる。左側の道は、小さな庭に向かって伸びており、天井はなかった。


 ケイトリンは迷わず左側の道を選び、歩き始めた。小さな庭、と思っていたが、石畳はずっと奥まで続いているようだ。


(きっと、昼間ならとても緑がきれいなのでしょうね。それに、とてもいい香りがするわ。薔薇かしら)


 ケイトリンは石畳を下りて、香のする方へと近付いた。シャンタルが好きだったため、ケイトリンの家にも多くの薔薇が植えてあった。


 もっとよく見ようとケイトリンが枝に手をのばした瞬間。


「そこにいるのは何者だ!」


 突然、背後から怒気を含んだ声がして、ケイトリンは戦慄いた。その拍子に薔薇の鋭い棘が、ケイトリンの人差し指をつき刺した。


「きゃっ!」


 驚きではなく、痺れるような一瞬の痛みのせいで、ケイトリンは短い悲鳴をあげる。

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