政宗かぶれの正志くん
空いたテーブルを吹きながら店長を盗み見ると、カウンターに座る常連客2人と『わが子自慢』に精を出していた。


そのだらけきった顔の後ろに年季の入った時計があり、それは19時18分を指していた。


私は20時までの勤務だったが、本来この食堂は21時まで営業していた。


それは先代からのことで、残業終わりのサラリーマンに癒しをという気持ちからだったらしい。


だが、息子に早く会いたいという父親心は疲れたサラリーマンをあっさり裏切り、半年前からオーダーストップは19時半、閉店は20時に変更してしまった。


薄利多売がモットーだったくせに、売るのを少なくしてどうするつもりか。


光輝のために馬車馬の如く働け、熊。


そう内心思いつつ、そろそろ外の『営業中』と書かれた看板を片付けに行かないと…と思っていたところに、ガラガラガラと引き戸の重い音がした。


「いらっしゃーい」


そう声をかけながら振り返ると、キョロキョロと室内を見渡す男性2人組がいた。


…ん?見覚えがあるような気がする、その眼鏡。


「あっ!」


眼鏡のうち1人が私の顔を指差すのと同時に、私も思い出した。


「この前の、眼鏡!BとC!!」


咄嗟に出た私の言葉は大変失礼なもので、一瞬静まった店内に


「お前…っ!せめて『さん』をつけろ!」


という、見当違いな熊ツッコミが響いた。
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