政宗かぶれの正志くん
「大変失礼しました。水とオシボリをどうぞ。メニューはそちらに貼っておりますので、ご覧下さい」


常連客ではない上に、失礼な物言いをしてしまったため、慣れない敬語で接客をする私をカウンターに居座る常連客が笑っている。


振り返り、ジロッと睨むとさらに笑われた。


『B』改め高田さんは、先程笑いながら改めて自己紹介をしてくれ、それに続くように『C』改め片山さんもしてくれた。


2度と会うことはないからと気を抜いた私の落ち度だ。


全くやる気がない合コンであっても、今後は気をつけて人名くらいはしっかり覚えておこうと心に決めた。


店長の厳命で料理が出来るまでその卓にいることになった私は、高田さんの横の椅子に座るよう促され、大人しく従った。


「偶然だねー、ここでバイト?」


「そうですね。バイトもですが、常連客でもあります」


「へー、そうなんだ。俺らはこの近くに友人が住んでて、ふと目に入ったら引き寄せられちゃって」


「ほのぼのっていう名前がね。僕たち、今徹夜明けで。疲れが溜まっていたみたい」


そう微笑む2人の目の下には確かにクマがあった。


「勉強ですか?やっぱり東大ともなると、大変なんですよね?」


そう聞くと、2人は「違う違う」と声を合わせた。


そして、少し黙りこむ。


2人で目配せをしているようだ。


頭がいい人は目だけで会話が出来るのだろうか。


そうぼんやり思いながら何気なく2人を見比べていると、頷き合い、2人揃って私の方を向いた。
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