S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。
「わたしはね───」
傘を握る火神さんの手が震えている。
そして、火神さんは意を決したかのように再び口を開いた。
「わたしは、火神組七代目組長、火神宗十郎(そうじゅうろう)の娘───火神蘭です」
火神組の組長の娘、と私は口の中で呟いた。
「組長の娘……それってさ、組にとってのアキレス腱みたいなもんで。さっきの奴らはわたしをさらって組を脅そうって魂胆だったの。わたしのせいで、本当にごめん……」
心からの謝罪と同時に頭を下げる火神さん。
「火神さん……」
「そうやってあんたに正直に家のことを言ったら明里はどう思うんだろうって考えた。そしたらさ、情けないけど、怖くなってどうしても言えなかった……」
絞り出した声で火神さんは言った。
「子供の頃はなんとも思わなかった。この世界しか……知らなかったから」
だけど、成長するに連れて自分の家は他の人と違いすぎることに気づいた、と火神さんの悲しそうな声が落とされた。