S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。
椿は驚く素振りを見せることもなく口を開いた。
「両家の当主が勝手に話してるだけだよ」
「でも……撫子様はもう決まったって」
確かにそう言っていた。
こんな形で話すんじゃダメだってわかってるのに、ちっとも冷静になれない。
本当はもっとひとつひとつちゃんと聞いて、しっかり受け止めたい。
私の気持ちも───
「俺の気持ちは明里にしか向いてないのに、決定させるわけないでしょ」
「……っ、」
椿はいつものように微かに笑みをもらすと、私の顔を覗き込んだ。
灰色の瞳が、真っ直ぐに私を捉えていた。
「……でもね、明日には私、消えるかもしれないよ?」
「は」
こんな憂鬱なことを言いたいんじゃない。
それでも、やっぱり椿の顔を見たらどうしようもなく願ってしまう。