S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。
「……椿様との、婚約を、わたくしは……大変嬉しく思います……」
懸命に言葉を繋ごうとしている声が震えている。
それは、撫子様の精一杯の強がりだった。
「な、なんだか……撫子様の、ご様子が……」
クラスのお嬢様達も動揺している。
いつもの毅然とした態度をとる撫子様の姿がそこにはないからだ……。
次第に肩を震わせて、俯く撫子様の頬を、ポツリと静かに涙が伝っていった。
「撫子様……」
思わず、驚いた私も声に出ていた。
……あの撫子様が。
いつも強い意志を持った瞳で私を見ていた撫子様が、感情を抑えきれずに泣いている。
たとえ有名財閥のご令嬢でも、裏を返せば私と同じ高校一年生の女の子だ。
ずっと、強くいられるわけじゃない……。
「なにをしているんだ!撫子……!大勢の方の前で、みっともない真似をするんじゃない!」
すぐにステージの横から怒号が飛んできた。