S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。
マイクなどなしに、その怒鳴り声は地を揺らすほどのボリュームだ……。
……と、その時。
椿が撫子様に何かを言っている。
唇を噛んで、なんとか涙を留めようとする撫子様の手から、そっとマイクをとった椿。
私も、このホール内にいるみんなも、椿がなにを話すのだろうと静まり返る。
こちらを見渡すかと思ったけれど、撫子様を見つめたまま、椿は口を開いた。
「───もう、嘘はやめよう?」
静寂の中に落とされた椿の声。
え……?
嘘……?
マイクを通したままの椿の声は、ホール内の全員に聞こえていて……。
「えぇぇぇーーー!?う、嘘!?」
「ちょ、ちょっとお待ちになってぇ!?ご婚約のお話は、嘘でしたの!?」
フォアグラのお嬢様が私の肩をガクンガクン揺らす。
い、いや、私も状況が飲み込めてないんですけど!?