S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。
「ねっ、ねぇ!戸澤くんってば……!!」
───ポスッ
「榎並。これ預かっといて」
「へ?」
わーわーわめく私のおでこに当てられたのはピアノの譜面だ。
「俺が戻って来るまで、お前にそれ預けとく」
「ちょ、戸澤くん!?戻ってくるまでって、どういこと!?」
「俺、もう我慢出来ねーみたい」
訳がわからず譜面を受け取った私に、戸澤くんが笑って言った。
「火神の言う通りだ。俺は“悪役”の方がお似合いだと思わねーか?」
悪役!?
ニッと歯を見せて笑った戸澤くんの横顔に、決意みたいなものが見えた気がした。
「───なこーーーーーっ!!!!」
「っ!?」
戸澤くんが叫ぶ。
それはもう、マイクを通したローランド先生の声よりも大きな声で。