S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。


なこ、と叫ぶ。


誰もが注目する。



みんなが、偉い人達が、ノブさんにも負けない強面の撫子様のお父さんが。



騒然とするホール内を、ステージ目がけて戸澤くんが走り出す。



「あの小僧はまた……!!おい!アイツを取り押さえろ!撫子に近づかせるな!」



数人の黒服の男達が飛び出して、戸澤くんを取り押さえようとする。




「行けーーーー!!戸澤!!一人で戻ってきたら一本背負いで吹っ飛ばしてやるから!」



火神さんが背中を押すように叫ぶ。


不敵に笑った戸澤くんの背中は、迷うことなく駆けていく。



───ずっと思い続けた、お姫様の元へ。



呆気にとられた私は、無意識に握りしめていた譜面の存在に気づいた。



これ……戸澤くんがいつも持っていた譜面だ。


私に託されたその譜面は、よく丸めて私の頭を叩いていたせいか、もうすっかり癖がついて、丸まっている。



そっと開いて、譜面を見る。



「……っ、」

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