S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。


胸がジーンと熱くなった。


ホールに移動する前の火神さんと戸澤くんのやり取りが脳裏に浮かぶ。



───“てか、あんたっていつも同じ曲弾いてるよね?お気に入り?”


───“いーや?ただ……指が痛くなるまで必死こいて練習した曲なだけ”


───“発表会で弾く予定だったとか?”


───“……さぁ?”



あの時も、戸澤くんははぐらかしていたよね。


なんて曲名なのか、誰も知らなくて。


でも今、もう全部わかっちゃったよ、戸澤くん。



戸澤くんが、どれだけ大切に想い続けてきたのか、この譜面に書かれた曲名で、伝わってきたよ。




【キミは僕のすべて 】



いつも戸澤くんが奏でていたその音色が、耳元で蘇った気がした。

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