S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。
* * *
賑やかなホールから出てきたせいだろうか。
寂しさを感じるくらい、ここは静かだ。
静寂しかないこの教室には、私ひとりだけだった。
祭典が再開されるまでの時間、私はとてもホールにはいられなくって、抜け出してきた。
火神さんの目を盗んできたから、もしかしたら心配してくれているかもしれない。
黙って出てきたから、気を悪くさせたかもしれない。
今になってそんな後悔に陥った。
今日は、後悔を残さないと決めて家を出てきたのに……。
でも、わかりきっていたことなのに、土壇場でラスボスに会うのが怖い。
私は、きっと戸澤くんと撫子様のようにはなれない。
大きな壁が立ちはだかってる。
奇跡なんて、起きるわけがないってこと、もうとっくにわかっていたのに。
───ふたりの姿に、夢を見たのかな。
「あっ!見つけたぁ!!」
「っ!?」
突然叫ぶような声が飛んできて、肩がビクリと跳ねる。