S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。


勢いよく振り返れば、そこには眉を吊り上げた火神さんが立っていた。



「なにしてるのよ!もう、祭典は再開されるよ!?」


「あっ。えと……」



とっくにそんな時間が経過していたとは。



「それに、ラスボスとの戦いはまだ終わってないでしょう!?」


「っ、」



不意をつかれて口ごもる。


答える間もなく、ぐんぐんと足を進める火神さんの剣幕は凄まじい。


逃げ腰で後ずさりするも、窓に背中がぶつかって、もう逃げ場などなくなった。



「明里」



火神さんの眼力は、初めて出逢った時となにも変わらず、強さを放っていた。



「まさか、このまま逃げるつもり?それじゃあ、あんたの負けだよ?」


「それは……」



まるで私が逃げてきた理由を見抜いたみたいだった。


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