S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。
「わたしがわからないとでも思ったの?」
ううん、と首を振った。
戸澤くんがいたら、火神組のお嬢だから察しがいいなって言うかもしれない。
けど、そうじゃない。
火神さんがずっと寄り添ってくれていたから、だから私の弱ささえも見抜いたんだと思う。
「わたしは逃げるのって好きじゃない。言い訳も嫌いだ。そもそも、あんたが逃げる理由なんて、何ひとつないでしょう?」
「……」
「あんたがさ、ずっと頑張ってきた姿はわたしは誰より近くで見てきたつもり。ひとつ覚える度に、嬉しそうにはにかんでるあんたが可愛くて、わたしまで嬉しくてさ……」
火神さんの語尾が柔らかくなる。
胸に込み上げてくるなにかがある。
私は顔を上げたけど、目の縁がじわじわ熱くなって、視界がぼやけて火神さんの顔がハッキリ見えない。