S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。


「……!?」



強く握られた火神さんの拳は私の頭の横にあった。



「……ふざけんなよ」


「え?」



今、なんて………?



「ふざけんなって言ってんだよ!」



今まで聞いたことのない低い声。


眉根を寄せて、火神さんが怒りを表す。


だけど、どこか切なそうに唇を噛んだようにも見える。



「ヒィッ!!!ひ、火神さん……っ、あの、いつもと違いすぎるような……!?」


「は。そりゃあそうだ。いつもあんたにはベタ甘になっちまうんだからしょーがねーだろ?」



ベタ甘!?


口調も、身に纏う空気も、全てがただならぬ雰囲気を放っていて……。



私はガチガチに硬直したまま立ちつくすしかない。



「でも、あんたの期待を裏切って悪いけど、組での顔はこっちなんだ」



どうやら、火神組のお嬢の顔をした火神さんが、私の前に降り立った……。



やばい、消されるかも………。

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