S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。
過ごしてきた学園内を突き抜けるように、走る。
流れる火神さんの髪、頼もしい背中、力強い手の温もり。
息があがって、火神さんを追いかけるように走りながら、涙腺が緩んだ。
奥歯を噛み締めて堪える。
パッと振り返って、走りながら火神さんが言った。
「言っとくけど……っ、わたし別にキレてないから!」
うん、わかってるよ。
そう答えたいのに声にならない。
だって、火神さんの言葉は優しい。
怒ってくれたのは私のためだ。
優しさが伝わってきて、心の柔らかい部分にそっと触れる。
いつも、その強さと優しさで包んでくれる。
───この手を、離したくない。