S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。


近くにいた生徒や教師や、来賓の人までもがこちらを気にするように見ている。


ローランド先生の不安そうな瞳と目が合った。



「あ、あなたねっ!」


「無論、どこの家の人間だろうと、この娘とわたしの契約に口出しをするのは認めない」



鋭く火神さんを制すると、ラスボスが再び向き直った。



「もう、充分だろう?」



終わりを告げられるのだと直感した。


先ほどのラスボスの言葉がぐるぐる旋回して、私は心の中で何度も繰り返す。



……出来た人間じゃない、と。



「キミも、いい思い出が出来ただろう?」



探るように私に問いかけてくる。



この三ヶ月、キラキラした日々はあっという間だった。



「椿のお父さんの、言う通りです」



ポロッと口をついて出た声は、ちょっと硬かったかもしれない。



「……明里?」



私は火神さんの目を見て、さっきよりも大きく相槌を打つ。



大丈夫だよ、火神さん。


もう、ここからはひとりで戦えるよ。

< 335 / 358 >

この作品をシェア

pagetop