S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。
「もちろん、称号など目指せるスタート地点にすらまだまだ遠いです。だけど、無駄なんかじゃなかった……」
みんなと過ごした日々に、無駄なことなんて、ひとつもなかったよ。
それだけは、自信を持って言えるんだ。
「無謀な挑戦でも、応援してくれる人がいました。いつだって、私を支えてくれました。友達に……なれました。彼女のことを、私はもっと知りたくなりました」
「……っ、」
弾かれたように火神さんが私を見た。
私は火神さんのことが大好きになっていて、離れるなんて寂しいって思っちゃう。
「もう、迷わないって……自分の気持ちに正直になれる庶民同士の素敵な友達も、出来ました……」
ねぇ、戸澤くん。
私も、後悔したくないって思ったんだ。
だから、今ここに戸澤くんはいないけれど、預かったあの譜面を渡す時、私はもう少し胸を張れるようになるからね。