S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。


私は、深々とラスボスに頭を下げた。


……心からの感謝をこめて。



大嫌いなラスボスでも、この人がいなかったら、私はみんなと出逢えなかった。



椿とも、もしかしたらあのまま言葉も交わさずにいたかもしれない。



椿のお父さんは、ラスボスだけど、椿のことを一番に考えているんだって。



口ではあんな風に言っていたけど、私が椿と、椿が私と過ごす時間を与えてくれた。



「……だが、キミはここに必要ない」



ラスボスの声が、重くのしかかかった。



覚悟していたけれど、いざ言葉にして言われると、苦しいのを耐えきれない。



明日から、私はもうここに来れないのだ。


どんなに悪あがきしようとも、約束は約束なのだ。



諦めなきゃいけないんだ。




「───それ、逆じゃない?」



舞い込んできたその人の声は、ステージに立った時よりもずっと近くて……。



ドキッと揺れた鼓動とともに、振り向けば───


< 340 / 358 >

この作品をシェア

pagetop