S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。


「ふんっ。そんなことも……可能性としては、ないとは言わないが……」



えっ、と心の中で声が出た。


だって、あのラスボスがだよ!?


驚いたのは私だけじゃなくて、椿も同じだった。



「俺、親父がライバルとかごめんだから」



負ける気なんてしないけど、と椿が目を細くする。



「ふん。そんな心配など不要だ。わたしは妻一筋だからな」



ラスボスの視線がギロりと私へと降りてきた。



「本来ならば出世払いなどは言語道断だが、今回は椿のいい表情が見れて気分がいい……」


「あのっ……そ、それって、つまり───」



くるっと背中を向けると、ラスボスを追いかけるように言った。



「……来年の祭典では、キミがステージに立てるように準備をしておきなさい」


「……っ、」



心が晴れていく。


虹がかかったみたいに輝き出す。



ああ、こんなことってあるのかな。



私、またみんなと一緒に居られるの?


この青薔薇学園で、みんなと過ごしてもいいの?



これって、まるで、奇跡みたいだ。



微笑む黒崎さんとともに去っていくラスボスの背中が、滲んで見えない……。

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