【完】DROP(ドロップ)
「これってストーカーじゃね?」
「そっ、そんな言い方しなくったって……」
泣きそうな顔で俺を見上げてるのに、追い詰める様に続けた。
「もう待つなって」
「……っ」
今までだって何回も言って来た。
ウザイとか、そんな事だけじゃなく本当に何かあったらヤバイから。
でも鈴ちゃんには優しく言ってても無駄。
それなら、そろそろキツく言わなきゃ、そう思ったんだ。
「……ゃない」
「え?」
小さな声は、静かな夜なのに聞こえなくて聞き返した。
「こうでもしなきゃ巧ちゃん、鈴の事見てくれないじゃない」
溢れ出そうな涙を堪えて、必死に耐えるその姿に……
「悪かったよ、ほら。帰るぞ」
負けてしまった。
小さな子供を宥めるかの様に、頭を撫でて自転車に跨った。
中々乗らない鈴ちゃんの腕を引っ張り、乗ったのを確認してペダルを漕ぎ始める。