【完】DROP(ドロップ)
さっきKEIに似てるって自分で豪語してた奴が鈴ちゃんの隣に座り、親しげに話してる。
てか鈴ちゃん嫌がってね?
近付く距離に、少しずつ離れて行く鈴ちゃんが見ていてもわかる。
そいつの手が鈴ちゃんの肩に周り、もっと近寄るそいつを両手で押し返してるのを見た瞬間。
「やり過ぎ」
そう言って、鈴ちゃんの腕をヒョイと掴み立ち上がらせた。
「はぁ? お前誰?」
ガン垂れるそいつが立ち上がっても俺が、そいつを見下ろす事には変わりなく。
「兄貴だよ」
「兄ちゃん? 本当かよ、松本」
俺から外した視線を鈴ちゃんに向ける。
俺も鈴ちゃんを見た。
小さく首を振ったかの様に見えた鈴ちゃんは、顔を上げ
「巧ちゃんは、鈴のお兄ちゃんなんかじゃないでしょ!」
そう叫ぶと走り出してしまった。
「ちょっと、鈴ちゃん!?」
「おい。お前、嘘言うんじゃねーぞ」
悪態つくそいつに
「うるせーよ、チビ。もう手出すな」
って大人気ない事を言ってしまったんだ。