【完】DROP(ドロップ)
「はい、じゃあ今日はここまでで。お疲れ様でしたー」
夏に向けて、コンサートの練習に入っていた俺達は、仕事の合間に集まっては振り付けの練習をしている。
汗をタオルで拭き、さっき合わせた振り付けをしながら俺に近付いて来た祥平が
「陸ー。さっきのリズムなんだけどさぁ」
声をかけてきたけど。
「え、あぁ。悪い、また明日!」
そう片手で携帯を確認しながらスタジオを後にした。
キャップを深く被り、ジャージに黒のTシャツ姿のまま外へ出た俺は、タクシーを捕まえた。
最近の俺はいつもこんな感じ。
今までなら、メンバーが帰るまで喋っていて。
そんな俺に付き合いきれないメンバーが呆れた顔で帰って行くのを見送り、その後に残ったスタッフと飲みに行ったりしてた。
勿論、女の子込みで。
それも、ここ最近はそんな事なんてご無沙汰。
毎日、少しでも時間があると向かう場所がある。
タクシーは繁華街の裏手にと停まった。
キャップのツバをクィッと下げると、左右を見渡し中へと入って行く。
勝手に階段を上がり、重い古びたドアを開けると、
今日は居た。
「何その格好?」
奈央が、ソファに座り俺の格好を見て笑っていた。