【完】DROP(ドロップ)



ほら、やっぱわかんねーだろ。

あの時の奈央は幻だったのか?



そんな事を思う俺の隣に腰を下ろした秋人が真剣な顔で話し出した。



「あのさー、2人に言っておかなきゃならない事があるんだ」

「何? 何? どーしたの?」



何だろう? そんなワクワク感を隠せない俺とは対照的に、冷静に秋人に視線を向けた奈央。



「うん。言いにくいんだけどな? 実はココ。来月で閉めるんだわ」

「は? 何で!?」



俺の弾んだ心は壊れ、予想もしなかった言葉に声が大きくなる。



「俺、結婚する事になってさ。婿養子ってのになるんだ」



何だそれーーー!?



そう言いたかった俺の言葉より先に



「えー、おめでとー! でも結婚って早いね」



そう奈央の言葉が重なった。



「実はデキちゃってさぁ。結婚して子供産みたいなら、仕事を継ぐのが条件だ。って言われたんだよ」

「それで、婿養子にまでなっちゃうなんて相当好きなんだね」

「まーね。いずれは結婚ってのは考えてなかったわけじゃないし。ただちょっと早いけどな」



ほんわか繰り広げられる会話に、顔を左右に向けるだけの俺は立ち上がった。




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