お稲荷様のお呼びです!


でもいつも通りの風景がそこにあるだけで、特に変わった所は見られない。



「何か困ったことがあればすぐ言うこと」



単語帳でそっと私の頭を叩くひーちゃんに、小さく頷くとチャイムが鳴り響く。


そっと立ち上がって自分の席へと戻っていくひーちゃんを見つめながら、今日もかっこいいねと心の中で呟いた。


賑やかさが徐々に静まっていき、皆自分の席に着く。


先生がやって来てSHRが始まって。


いつも通り……いつも通りなのに。


どこか違和感を感じてしまう。


あっという間にSHRが終わって、その違和感に腕組みをして考えているとひーちゃんが私の名前を呼ぶ。



「千代、行くよ」



1限は化学実験室でちょっとした実験だったっけ。


移動教室ということをすっかり忘れていた私は急いで教科書を手に取り、扉の前で私のことを待つひーちゃんの元へ。


急ぎ足で化学実験室へと向かう。



「今日ってかいちゃん先生の日?」


「あー……そうだね」


「失敗しないといいね」



かいちゃん先生こと海原先生は実験室にいる非常勤の先生。


顔は優しそうでも、実験というスイッチが入ると人が変わってしまう先生。


でもよく気合いを入れすぎて失敗するんだけど。


しょんぼりとするあの顔を思い出すとついつい笑ってしまう。



「本当に卒業する前に一度でいいから、かいちゃん先生が成功する所見たいな〜」


「去年の先輩達でさえもその姿見てないって言うんだから、実験回数増やさないと無理に近いよ」


「あははは……かいちゃん先生頑張れ……」



初めて聞いたその情報に顔を少し引きつらせた。



< 120 / 253 >

この作品をシェア

pagetop