お稲荷様のお呼びです!


咄嗟に後ろを振り返るけど、見えるのは校舎へと向かう同じ制服を着た生徒達。


サラサラと揺れる木々の木の葉の音に、楽しそうな笑い声が合わさる。


……何かいる。


そうは思っても姿が見えない。


それどころか私は見えた場合の対処方を知らない。


どうする、千代。


ここは何も感じなかったかのように振舞って、夜を待つしかないのか、それとも――



「今のは邪気はなし。標的としている妖ではない……か」


「そっか、なら今はとりあえず教室へ……って?!」



鞄からちょこんと首から上を出して辺りを見渡しているのは、チワワぐらいのサイズになった――伊鞠くんだった。


ズボッとその頭を鞄の中に突っ込むと、もがっ!?と短い鈍い声が漏れた。


千代とまたひーちゃんが玄関前で私を呼んでいる。




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