お稲荷様のお呼びです!
「ごめんね、ちょっと私具合悪いみたい」
「え……大丈夫なの?それだから今日様子おかしいんじゃ……」
「うん。ちょっとお腹も痛いからトイレに行ってから行くね!」
言いながらもう私は廊下を走り始めていた。
この時間に人が少ない場所は……
唯一頭に浮かびあがったその場所へと、一目散に走り出す。
途中ぶつかりそうになる度にぺこぺこと頭を下げて、階段を駆け上がる。
ぎゅっと鞄を抱き抱えるように走り、特別棟3階――社会科準備室の扉を勢いよく開けてすぐさま閉める。
ここならまず人が来ない。
資料室としてあるこの教室だけど、先生達も使うことはまずない。
埃を被ったダンボールの山を見れば一目瞭然だ。
上がった息を整えながら、大きく深呼吸をして鞄のチャックを開ける。
教科書とポーチ類の入っている鞄の少し空いたスペースに、目を回した伊鞠くんが伸びていた。
一旦鞄のチャックを閉めて見なかったことにしようか、どうしようか考えていると勝手に鞄が開く。
「乱暴すぎるぞ!!!」
復活の速さに目を丸くしていると、ぽんっと弾ける音と共に白い煙が伊鞠くんの体を包んだ。
その煙が消えると元の大きさに戻った伊鞠くんが、腕組をして私を睨んでいた。