お稲荷様のお呼びです!
少し乱れた髪を乱暴に整えて、私の目の前へと浮かび上がる。
びしっと立てた人さし指が私の鼻スレスレに指し示された。
「私に何をしたか分かってるか!?」
「鞄に押し込んだ」
「……正直者め」
やれやれといった様子でため息を漏らしながら、くるりと宙返りをする伊鞠くん。
なんでこんな所に伊鞠くんがいるんだろう……
私の言いたい事が視線で分かったのか、腰に手を当てて胸を張ると咳払いを一つして話始める。
「嘉様の素晴らしいお考えにより、私がこの学校とやらに潜入し状況を把握する。それを嘉様に報告することで今後の行動が取りやすい。こうやって小さな場所にでも私は入ることも可能な私にピッタリな任務だろう!」
「つまり雑用を頼まれたってことね」
「ざっ雑用とはなんだ!!雑用とは!!しっかりとした任務だ!!」
顔を真っ赤にして怒る伊鞠くんだけど、怒り方がどうしても可愛くて顔がニヤニヤとしてしまう。
先生に褒められるために頑張る小学生みたい。
その体を活用したことだろうけど、嘉さんはきっとここまで来るのが面倒で伊鞠くんに頼んだんだろうな。
そう思うと、堪えきれられなくなって笑い出す。
「わっ笑うな人間!!」
「ごめん、ごめん。立派な任務だね」
「ばっ、馬鹿にしてるようにしか聞こえないのは私だけか?!」
よしよしと伊鞠くんの頭を撫でると、きっと睨まれた。
そんな伊鞠くんも可愛いから良しとしよう。