お稲荷様のお呼びです!


いつもなら楽しそうな笑い声で包まれる時間にも関わらず、その賑やかさはない。


それどころか教室はガランとしていて、生徒全員が揃っていない。



「電車にも遅れが生じてるみたいだよ。亀裂が線路にも影響あったので、朝からドタバタしてるの見えた」


「そっか……だからいつもより人が、少ないんだ……」


「本当にどうなることやらって感じだよね」


「うん……」



ゆっくりともう一口ココアを飲むけれど、もうさっきみたいに落ち着かせてくれることはなくて。


優しい味が妙に胸を痛めるような気がした。


すると突然放送のチャイムが響き渡る。



『臨時の集会を体育館で行います。速やかに移動し、各学年事に整列してください。繰り返します――』



先生の少し張った声が大きく響く。


ざわめきが増して、ぞろぞろと廊下に出ていく姿を見ながらココアをぐいっと飲み干した。




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