お稲荷様のお呼びです!
いや、今は授業に集中しなきゃ……期末テストが危うくなる。
誰にも気づかれないように、頬の肉をそっと摘み気合いを入れる。
『――よ……み……って』
聞き覚えのあるようなその声に、はっとして辺りを見渡す。
でも声の主は見えることもなく、先生が黒板に文字を書く音が教室にこだまする。
聞き間違いだったのかな……しばらくの間首を傾げるけど、状況は何も変わらない。
気持ちを切り替えてノートを取ろうとする。
でも、ハッキリとその声は聞こえた。
『ちゃんとよく見て。力を使って!』
その声を鼓膜が捉えた後、目を見開いて窓の外を見た。