無気力王子とじれ甘同居。
「…ごめん、俺つい」
「……」
「祐実…」
『こっちを向いてよ』
そういいだけな松下くんの私を呼ぶその声に負けそうになるけど、今回ばかりはやっぱりなんだかショックだ。
私はファーストキスを奪われて、それに対して松下くんが罪悪感にさいなまれないなんて、不公平だと思う。
「松下くんは、ああいうこと慣れてるからなんとも思わないかもしれないけど───っ」
「バカ」
っ?!
ほんっと、不意打ちで暴言吐くの直した方がいいよ、松下くん。
「なんとも思わないわけねーじゃん」
「…えっ?」
驚いて、思わず体を松下くんの方へと直してしまう。
そこには、頭を手で支えて横になりながらこちらを見てる松下くんがいた。
「俺だって、そん時はそれなりに緊張してるし」
「…っ、嘘だ!絶対嘘だ!」
ムキになってそう怒鳴ったのはきっと、もし松下くんのその気持ちが本当なら、ちょっと恥ずかしいかもと思ったからかもしれない。
「…じゃあ、嘘でいいよ」
ほら、テキトーだ。
「松下くんのバカっ!!」
私は彼にそう怒鳴ると、雑にベッドを降りてから、ドスドスと聞こえそうな足どりで部屋を後にした。
こんな奴にファーストキス奪われたなんて、ほんっと腹立つっ!!