跳んで気になる恋の虫
「それから、カレシがいるというのも嘘でした。みんなに後れを取るのが怖くて、バイト先の先輩に頼んでつきあってもらっていました。でも、気持ちの全くないつきあいは、私にとってずっともやもやするものでした。それでも、小さなプライドが邪魔して言えませんでした。仲間外れにされるんじゃないかと怖かったからです。ほんとにごめんなさい」
そして私は、虫屋にも頭を下げた。
「ごめんなさい。虫屋のこと、何も知らないくせに、ひどいことを言っていました。虫屋のことを知ったら、私の方がひどいと感じました。誰に何を言われても、自分の好きなことを貫く虫屋がすごいと思いました。私もそうなりたいって……だから、無理かもしれないと思ったけど、高跳びが好きだから頑張った。後悔したくなかった。虫屋のおかげで跳べたよ。ほんとにありがとう。すごく嬉しかった」
唇をぐっと噛んで、涙をこらえる私の背中をポンと叩いて沙知が話し始める。