我喜歡你〜君が好き〜
就業と同時に会社を出た凪沙は、あの日のカフェに行くには時間が早いと考えたので早めの夕食を済ませることにした。
ファミレスにでも…と考えたが学生たちが多いのを考慮して牛丼チェーン店に入った。
おひとりさま生活が長い凪沙は、1人で牛丼チェーンに入ることになんら抵抗はない。それがラーメン屋だろうが焼肉屋だろうが、映画館だろうが同じだった。
食券を買って店員に渡せばすぐに注文した食事が運ばれてくる。
なるべくそれを時間をかけて食べて、腹ごなしにそのまま駅ビルの本屋へ向かった。
この前理依奈からもらった小説はもう読破してしまったので、新しいものを探していた。今日カフェに行っても会えなきかもしれない。何時に来るかもわからない。その時のお供を見つけなくては…。
いつもは推理小説やサスペンスなどを好んで読んでいるが、今日は珍しく恋愛小説のコーナーに立った。
色とりどりのポップには本を読んだ店員の感想がでかでかと書かれている。最近テレビで「カリスマ図書店員」と言う言葉が多く聞かれるのでその煽りを受けているのかもしれない。
本が積み重なってできた島を眺めながら、中々心惹かれるものが無くブラブラと行ったり来たりしていると、平積みされた文庫本の中に懐かしい名前を発見した。
作者「Kyou W」。
凪沙が高校時代によく読んでいた作家の名前だった。懐かしい…。
思わず、作品を手に取る。久しく読んでいなかった彼の最新作は純愛小説だった。
凪沙は背表紙のあらすじに軽く目を通して、そのままレジへ持って行った。
彼の作品は丁寧に人間模様が描かれた推理サスペンスと予想もつかない場面展開が特徴的だった。その彼が純愛小説。ファンとして興味を惹かれない理由が見当たらない。
店員にカバーをつけてもらい店を出た時には、あたりは暗くなっていた。
しまった。
軽く時間を潰すつもりが、思いの外長居をしてしまったらしい。
凪沙は足早に駅とは反対方向に歩き出す。
今日は彼は来るのだろうか?
そもそも、どうしてあの日あそこにいたのか?彼女と待ち合わせだったのかもしれない。
…だとしたら、自分が行く意味があるのか?
カフェが近づくにつれて凪沙のなかの不安が大きくなって行く。
いや…ダメよ。
ここで帰っちゃダメ。
たとえあの人が来なくても、彼女がいてももう一度顔が見れれば、それだけでもいいじゃない。
時間を潰すには最高の小説も手に入れた。
今日は会えなくても、この小説が読めただけで良しとしなきゃ。
そう思いなおして凪沙はカフェへ足を踏み入れた。
ファミレスにでも…と考えたが学生たちが多いのを考慮して牛丼チェーン店に入った。
おひとりさま生活が長い凪沙は、1人で牛丼チェーンに入ることになんら抵抗はない。それがラーメン屋だろうが焼肉屋だろうが、映画館だろうが同じだった。
食券を買って店員に渡せばすぐに注文した食事が運ばれてくる。
なるべくそれを時間をかけて食べて、腹ごなしにそのまま駅ビルの本屋へ向かった。
この前理依奈からもらった小説はもう読破してしまったので、新しいものを探していた。今日カフェに行っても会えなきかもしれない。何時に来るかもわからない。その時のお供を見つけなくては…。
いつもは推理小説やサスペンスなどを好んで読んでいるが、今日は珍しく恋愛小説のコーナーに立った。
色とりどりのポップには本を読んだ店員の感想がでかでかと書かれている。最近テレビで「カリスマ図書店員」と言う言葉が多く聞かれるのでその煽りを受けているのかもしれない。
本が積み重なってできた島を眺めながら、中々心惹かれるものが無くブラブラと行ったり来たりしていると、平積みされた文庫本の中に懐かしい名前を発見した。
作者「Kyou W」。
凪沙が高校時代によく読んでいた作家の名前だった。懐かしい…。
思わず、作品を手に取る。久しく読んでいなかった彼の最新作は純愛小説だった。
凪沙は背表紙のあらすじに軽く目を通して、そのままレジへ持って行った。
彼の作品は丁寧に人間模様が描かれた推理サスペンスと予想もつかない場面展開が特徴的だった。その彼が純愛小説。ファンとして興味を惹かれない理由が見当たらない。
店員にカバーをつけてもらい店を出た時には、あたりは暗くなっていた。
しまった。
軽く時間を潰すつもりが、思いの外長居をしてしまったらしい。
凪沙は足早に駅とは反対方向に歩き出す。
今日は彼は来るのだろうか?
そもそも、どうしてあの日あそこにいたのか?彼女と待ち合わせだったのかもしれない。
…だとしたら、自分が行く意味があるのか?
カフェが近づくにつれて凪沙のなかの不安が大きくなって行く。
いや…ダメよ。
ここで帰っちゃダメ。
たとえあの人が来なくても、彼女がいてももう一度顔が見れれば、それだけでもいいじゃない。
時間を潰すには最高の小説も手に入れた。
今日は会えなくても、この小説が読めただけで良しとしなきゃ。
そう思いなおして凪沙はカフェへ足を踏み入れた。