寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
「そうか。ミノワスターは初めてではないとはいっても、これからは立場も変わるし慣れない事も多いだろうから、頼む」
「任せてくださいませ。王太子妃として立派にその役目を果たせるように、力を尽くしますよ。もちろん、セレナ様がお好きな刺繍でも裁縫でもお料理でも、なんでも教えて差し上げます。なんといっても、私はアメリアの親友ですからね」
ラーラは余裕の笑みを浮かべて胸をトンと手で叩いた。
「私がお仕えできる限りは、セレナ様をお守りいたしますからご安心ください。それよりも」
砕けた口調で話していたラーラの表情が真面目なものに変わった。
テオはそれに気づき、首をかしげた。
「テオ様こそ、セレナ様を傷つけないようにしてくださいよ」
まるで説教するような口ぶりに、テオは半歩あとずさった。
「お、俺は、セレナを傷つけるつもりなんてないぞ。むしろ、とことんかわいがって……」
「はいはい、わかってますよ」
ラーラはテオの言葉を遮り、すっと耳元に唇を寄せると、小声で言葉を続けた。
「テオ様がセレナ様を大切に想ってらっしゃるのはわかってます。ですが、王太子になられて、多くの諸侯の方々がテオ様に取り入ろうとしているのはわかっておいでですよね」
「……ああ」
ラーラの言葉に、テオは一瞬で表情を引き締めた。
お気楽な第二王子という立場から大国の王太子となった今、テオの周囲はあっという間に変わってしまった。
誰もが一目置くカルロには決して近づこうとしなかった者が、テオには愛想を振りまき近づいてくるのだ。
女性関係が華やかで、国政には無関心。
暇を見つけてはランナケルドに赴き婚約者のご機嫌をうかがっていたお調子者。
おまけに国王と王妃に甘やかされた王子なら、取り入るのも簡単だろうと考える諸侯は多い。
中には年ごろの娘をテオの側妃に差し出す準備をしている者もいるという噂も耳に入り、テオは面倒で仕方がない。