寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


 ミノワスターもランナケルドも国王が正妃以外に側妃を持つ事を許されているが、ここ百年、側妃を持った国王はおらず、それはあまりにも現実味のない話だ。
 男女どちらでも王位を継ぐことが認められているのだ、無理に側妃を迎えてまで王子の誕生を強いられる事もない。
 とはいっても、テオは長い間、婚約者であったクラリーチェと順調に付き合いを続けてきた。
 突然結婚相手が変わって落ち込んでいると思われても仕方がない。
 そうなれば、クラリーチェがいなくなってできた心の隙間に自分の娘を忍び込ませようと、諸侯たちが画策しても不思議ではない。

「だけど、面倒だよな。ようやく俺も兄さんも惚れた女を手に入れたっていうのに、勝手に動き始めた周りをどうにかしないといけないなんて、余分な労力を使わせるなよ」
 
周囲に控える使用人や騎士たちに聞こえないよう、小声で話すテオに、ラーラは苦笑した。

「ですよね。せっかくセレナ様とおふたりの時間をたくさん持てるようになったのに、あれやこれや、時間を割かなければなりませんね」
「……ほんと、面倒くさい」

 ただでさえ王太子という立場に就いて以来、日々の仕事が増え執務室にこもることも多い。
 カルロがランナケルドの王配となり、テオがミノワスターの王太子に就くという計画を立てた時から覚悟はしていたが、予想をはるかに超えた書類の多さには辟易している。
 テオには王太子としての資質が備わっていないと思っている国王から呼び出されて勉強会なるものが始まったり、王太子が結婚前に済ませなければならないあらゆる行事をひとつひとつこなしたり、その忙しさはかなりのものだ。
 先週は王太子としての清廉な体を得るため、ミノワスターの北端にある湖で体を清めたが、途中で宿に泊まりながらの往復四日間の旅でテオはかなり疲れた。
 この一年の忙しさを思い返し、テオはうんざりとした表情を見せる。
 結局、セレナのウェディングドレスがどんなデザインなのかを知る時間もないままこの日を迎えたのだ。
 来週早々予定されている周辺各国との会議では、議長国であるミノワスターの代表としての責務を負い、準備も忙しい。
 その会議のせいで、新婚旅行にも出かけられないのだ。
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