寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない
セレナは手元の紅茶を飲みながら、小さく息を吐いた。
ソフィアにからかわれたように、テオは結婚式の日以来、毎晩セレナを抱いている。
抱くというよりは、抱き潰すと言った方が正しいほど激しい。
何もかもが初めてのセレナには刺激の強い毎日なのだが、テオはどれだけ激しく熱い夜を過ごしても、朝になれば元気に起きて公務にでかけてしまう。
正式に王太子となり、忙しいのはわかるが、昼間はセレナと顔を合わせる事もなく、彼女は寂しくて仕方がない。
この二週間で食事をともにしたのは二度しかない。
結婚を三か月後に控えるカルロ王子がミノワスターにいる間に引き継ぐべきものが多いせいで、テオには自由になる時間がない。
国民から注目されるプレッシャーも大きく、テオが大変なのはわかるが、これほど会える時間が少ないと、余計な事まで考えてしまう。
それは、やはりセレナはクラリーチェにはなれないということだ。
もしもクラリーチェと結婚していれば、テオは無理をしてでも時間を作り、食事をともにするだけでなく、馬に乗って遠出をしたり、まだまだ不慣れな城の中を案内してくれたかもしれない。
セレナは、日に日に大きくなる寂しさを持て余し、落ち込む時間も増えていた。
こんな時、ランナケルドにいれば離宮のアメリアと料理をしたり、新しいデザインの刺繍をして気持ちを紛らわせるのだろうが、結婚して心を許せる知り合いもまだいないセレナは、苦しみや寂しさを吐き出せずにいた。
そんな中で、ソフィアのように明るい女性と知り合えて、セレナの心は少し、落ち着いた。
それだけでなく、彼女の言葉はセレナに希望を与えてくれた。
ソフィアが旦那様に一目ぼれし、王家の命令にも近い強引さで結婚まで持ち込んだ彼女の結婚だが、今の彼女はどう見ても、旦那様から愛される幸せな妻だ。
幾つか残されているキスマークだけでなく、ソフィアからにじみ出る自信のようなもの。
それはきっと、愛される女性のみが持てる自信だ。
今のセレナに愛されている自信はまったくないが、ソフィアのようにこれから愛されるかもしれないと、かすかな希望が見えてきた。
テオも、今はまだクラリーチェとの結婚を望んでいた気持ちを捨てきれずにいるかもしれないが、もしかしたら、セレナを愛するようになるかもしれない。